忍法旅日記⑯『龍泉洞編 其の伍』

体が重い…
まるで大岩でも背負わされているかのようにズシリと体が沈み込む。
遅れをとらぬようになんとか足を前へと踏み出すが、一歩進むごとに体がどんどん沈むばかりか吐き気までが湧きあがり、さっき食べたスルメが喉へと這い上がってくるのを必死で堪えた。
先程から体にのしかかっている不調の原因はこの瘴気だ。
龍泉洞の奥へと進むにつれ濃さが増している。
まだまだ半人前以下とはいえ一応は忍びの端くれ、厳しい修行にもそれなりに耐えてきたからこの程度で済んではいるが、常人ならすでに気を失っていてもおかしくない。

「あ、あねさま…ぎぼぢわるいです…」
「しっかり…と言っても、私もこんな濃い瘴気は初めてだわ」
「気合いいれろよ、飲まれるぞ」

分かってはいるが、このどうしようもない気持ち悪さでは、理性を保っていられるのも時間の問題だ。
そういう小次郎さんも流石に中てられているのか、額にじんわりと汗がにじんでいる。
先頭を行く師匠も同様だ。
手練れ三人でさえこの状態なのだ、足元にも及ばないへっぽこの私などひとたまりもない。
もし今敵に出くわしたら一歩も動けずそのままお陀仏だろう。

「最上、怪とやらはまだ奥なのか?」
「もう近いよ、この先にいる」

小次郎さんが少し苛立ちながら聞く。
重い頭をなんとかあげて師匠の指さす方を見ると、そこには一層濃い瘴気が渦巻いていた。
いやいや…
いや、無理でしょ…見てわかるくらい淀んでるのにあんなとこ行けないよ…
もう置いて行かれてもいいや…ここで座り込んでしまいたい…
そう思い項垂れていると、右腕をグイッと持ち上げられた。

「もう音を上げるの?」
「あねさま…」

自分も真っ青な顔をしているのに、私の体を支え励ましてくれる。
そんな姉さまを見て、私はなんて未熟者なんだろうと改めて思う。
体どころか心まで落ちてしまうところだった。
せめて足手まといにだけはならない様にしなければと、心新たに顔をあげた時、師匠が後ろを振り返り口元に人差し指を当て「静かに」と合図し、奥へと目配せをする。
その視線の先には、今まで見たこともない大きな生き物が蜷局を巻いていた。
禍々しい瘴気の渦の中に姿を現したそれは、全身を岩のような鱗で覆われており、蛇のように長く、鷲のような鋭い爪をもち、ナマズのような髭をたくわえている。

「…龍だ」

小次郎さんがため息を吐き出すように小さく呟く。
私たちの前に姿を見せた龍泉洞の主は、その名に相応しく威風堂々たる佇まいで訪問者を待ち構えていた。
あれが、怪の正体…?
こんな状態で、あれと戦うの…?
さっき姉さまに叱咤されてやっと持ち直したはずの気力も、目の当たりにした強大な敵に脆くも崩れ去った。
これ以上は下がらないというほど肩を落としていると、小次郎さんが忍特有の木の葉が擦れるほどの小さな声で作戦を話し始めたが、それは意外なものだった。

『一旦引くぞ』

いうや否や踵を返し、足音も立てず来た道を引き返すと、姉さまも師匠も無言でそれに続く。
いつもなら「えぇー!せっかく来たのに帰るんですか?!」などと生意気を言ってしまうところだが、今回ばかりは私も早くこの場を離れたくて仕方がなかったので、全力をもって三人の後について戻ることにした。
あの巨大な主はそんな私たちに気づいていないのか、それともただ去る者追わずなのか…
ピクリともその場を動くことはなかった。





「死ぬかと…思いました…」

なんとか瘴気の外にまで戻ってきた私たちは、みな一様に大きなため息をついた。

「おそらく、あれが尼僧の言っていた怪で間違いないだろう」
「そうでしょうね」
「あ、あんなの…どうやって倒すっていうんですか、あんな瘴気の中ではまともに動けませんよ><;」
「わめくなへっぽこ、だからこその撤退だろう」
「ですよね、もう諦めて帰りましょう!」
「出れないのにか?」
「じゃ、じゃあどうすればいいっていうんですか!」

小次郎さんは、岩壁にもたれ顎に手をやり少し考えるそぶりを見せた後、ゆっくり口をひらく。

「試したいことがある」
「試すって、何をですか?」
「俺たちは結界から出られないが、あの尼僧はどうだ?最上もあの尼僧に会ったんだろう?」
「うん。仙台で依頼を受けてすぐに出発したのに、着いた時にはもうここに居たかな」
「…やっぱり、同じか」
「あれ?じゃあ、あの尼僧は結界を通り抜けられるってことじゃないですか!私たちも出してもらいましょう!」
「で?その尼僧はどこにいる?」
「あ…(・_・;」

そうだ、尼僧のいる入り口まで戻れないんだから出してもらいようがない。
脱出できるかもと期待した私がばかだった。

「入り口まで戻れたら助けてもらえるのになぁ〜」
「無理だよ、入り口から結界が張られてるから。入ってすぐに脱出経路を確保するため一度出ようとしたんだけど、その時はもう出られなかったよ。尼僧もいつのまにか居なくなってた」

落胆して頭を抱え込む私に、師匠が両手を組んで上に伸びをしながらあっけらかんと言う。
絶対絶命のピンチのはずなのに、不安を感じさせない余裕の態度。きっと師匠は幾度となくこんな修羅場をくぐり抜けて来たのだろう。
しかしあの尼僧はほんと謎の人物だ、相当な力を持った人なのかな。
出るたびに結界破ってるの?
そんな力があるならあの龍も自分でなんとかできないのかなあ。
疲れのあまりそんな愚痴ばかりが頭に浮かんでくる。

「こんなところに出入り自由なんて…あの尼僧はよっぽどお偉い人なんですかね〜」
「もしくは、誰かの式なのかも…」

今まで黙って聞いて居た姉さまがポツリと呟く。
式というのは陰陽師が使役している式神のことだ。妖怪を使役したり、念を込めた人形(ひとがた)のことを式と呼んだりもする。

「俺もそうじゃないかと考えている。あの気配の無さも辻褄が合うしな」
「そうね…感情を持たない式なら結界を通り抜けられるかも」

どうやら二人が話しているのは後者の式のようだ。
私には結界のことはよく分からないが、人の殺気やなんらかの思いに反応して封じ込めたり防御したりするらしく、誰かに使役され自分の意思や感情がない式には通用しないということなのかもしれない。

「るーあん、式を出して結界を抜けられるか試してみてくれないか?」
「分かった」

姉さまは懐から人形に切られた紙を取り出し、ふぅ、と息を吹きかけるとそこに指で五芒星を書いた。
すると、その人形が風になびくようにバタバタと動いたかと思うと、姉さまの手から勢いよく飛び出しあっという間に見えなくなってしまった。

「ほぇ~、すごい勢いでいっちゃいましたね」
「これで式が結界をぬけられるといいんだが」
「でも、式が出れても私たちが出れないんじゃどうしようもないじゃないですか💦」

小次郎さんはわめく私をチラリと見ると、答えるのも面倒くさいと言わんばかりに「はあぁ」とあからさまなため息をつき、腕組をして壁にもたれたまま目を瞑ってしまった。
ぐぬぬ、何か馬鹿にされてるみたいで腹立つー!
いや、みたいでじゃなくてあきらかに馬鹿にされている!><;
そんなやり取りをしていると、しばらくして横に居た姉さまが何かに反応して顔をあげた。

「式が結界を抜けたわ」
「えぇ!?はや!」

それを聞くと、小次郎さんは体を伸ばしながら「よし」と言った。

「援軍を呼ぶぞ」
「え?!Σ(゚Д゚)」
「一人は心当たりがある。あとは、できれば仙台に薬の調合と治療ができる者がいればいいんだが」
「それなら私に任せて、ちょうど仙台に腕のいい薬師がいるから」
「じゃあ頼む、その二人に式を送ってここに来てもらおう」

援軍って…
そりゃ仲間が増えるのはうれしいけども…だってここ…
わたしはおずおずと手をあげる。

「あ、あのー…ここ入ったら出れないのに来てくれますかね?」
「怪を倒せばいいだけだ」
「そりゃそうですけど…」

閉じ込められるって分かってて来てくれる人いるかなぁ…?
心当たりあるって言ってたけど、まさか小次郎さんそのこと伝えないつもりなんじゃ?
そう思いながら疑いの眼差しを向けると、小次郎さんは今まで見たこともないような悪ガキの顔をしてニヤリと笑った。

「旅は道連れっていうだろう?」

そう言い放つこの男を敵に回してはいけないと、私は悟った。
















※この物語はフィクションです。実在の人物等まったく関係ございませんm(__)m

信onであって信onでないそんな旅日記(笑)
どうもご無沙汰してしまいました💦
えーと、前回2月に更新しているので約3か月ですね…もう3か月更新にしようかな(^▽^;)
この旅日記を書き始めたのが2015年の11月。
龍泉洞編を始めたのが2016年の8月。。。
やばい!龍泉洞編だけで1年経っちゃうよ(>_<)
そんなことだから信on世界からどんどん置いて行かれちゃうんだ💦
1年以内には龍泉洞編終わらせます!!
あー誰かイラスト描いてくれないかなぁ(°▽°)

ちなみに余談ですが、今回出てきた人形(ひとがた)は、よく神社の夏の大祓(茅の輪くぐり)などで使いますね♪
あれに名前と年齢を書いて息を3回吹きかけ体をなぞり、その後忌火で燃やすと災厄を身代わりで受けてくれるといいます。
(※やってない地域もあります)
みなさまもお祭りの時に近所の神社を訪れてみてはいかがでしょうか(*'▽')

今回もいろいろツッコミどころ満載だと思いますが、どうぞ生暖かく見守ってください(/ω\)
ほんとお恥ずかしいです。。。
パスワード制にしようかと思ったけど、もしかしたら知人以外にも旅日記見てくれてる人がいるかもだし…
いないかもだけど…(笑)
とりあえず8月までに終われるようにがんばります(*'▽')ノ
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忍法旅日記⑮『龍泉洞編 其の四』

キラキラと光る金色の髪、あふれ出る色気、しなやかでいて力強い技。
突如として現れた美しき命の恩人に目を奪われ、私はその場にへたり込んだまま動けずにいた。

「大丈夫?」

その人は倒した鬼の上からヒラリと降りると、固まっている私を心配そうに覗き込んできた。
なんと!声まで美しい!
この人こそ私の理想とするセクシーくノ一だ!
あぁぁあ目指すべき理想が姿を成して今まさに私の目の前にいいい!
ゴンッ
という鈍い音とともに、鼻息荒い私の頭に姉さまの拳が容赦なく落ちる。

「いったあああああ><;」
「ボーっとしてんじゃないの」

あまりの痛さに涙目で頭を抱えてしゃがみ込む。
姉さまは手加減というものを知らないんだ!
頭が凹む勢いだよ(>_<)

「あの、大丈夫…?」
「はっ!ありがとうございます!大丈夫です!」
「そう、よかった」

勢いよく立ち上がり深々と頭を下げながらお礼の言葉を口にする私に、その人はそう言ってフッと笑顔を見せた。

「最上、無事だったか」
「こじさん久しぶりー」

絶体絶命のピンチを救ってくれたのは、くノ一の最上さんといった。
最上さんは里の手練れの一人で、小次郎さんとは昔からの知り合いのようだ。
こんな何があるか分からない場所の調査を任されるくらい、長からは信頼されているらしい。
美人で強くてセクシーでって…まさに私の理想!
私はチラと姉さまと最上さんを交互にうかがい見る。
うん、やっぱり姉さまより色気があるような気がするな。
姉さまも美人だけど色気では最上さんに軍配があがるよねーうん。
一人うんうんと頷きながらそんなことを考えていると、また頭に激痛が走った。

「いったああああああいいい!何するんですか姉さま><;」
「考えてることが顔に出てるのよ、顔に」
「べ、別に何も考えてないですよ><;」
「さやの考えてることくらいお見通しよ」
「何やってんだよお前ら…」

騒ぐ私たちに小次郎さんが白い目を向ける。
何はともあれ、万が一の事態も頭に入れていた私たちは、無事に合流出来たことに胸をなでおろした。

「ところで最上、長が連絡がないと言っていたが?」
「あー…うん、だって出られないから」
「え!?」

さも当然のようにさらりと言った最上さんの言葉に、三人ともが耳を疑った。
今なんか衝撃的な事を聞いた気がするんだけど…
シーンと静まり返った後、しばらくして小次郎さんが口を開く。

「どういうことだ?」
「んー、なんか内側から結界みたいなものが張られてる」
「はああ?その結界は破れないのか?」
「私じゃ無理だったよ」

入るときは結界なんて全く感じなかったのに、どうやら一度入ると出られない様に罠がかけられていたらしい。

「私がやってみようか?」

二人の会話を聞いていた姉さまが名乗りをあげた。
そうだ、陰陽道にも精通している姉さまなら、忍びに破れない結界でも何とかできるかもしれない。

「そうだな、るーあんやってみてくれ」
「わかった」

状況を確かめる為、私たちは一度入り口まで戻る事にした。
もし…もし姉さまでも無理だったらどうしよう。
まさかずっとここで…
そんな恐ろしい考えが頭をよぎる。
いやいや、そんな事考えちゃだめだ!不安なのは私一人じゃない。
しかし、最上さんは一体いつからここに閉じ込められてるんだろう。

「あの…最上さんはどのくらいここに?」
「んー…ずっと閉じ込められてるから正確には分からないけど、体感ではひと月くらいかな」
「ひと月も!?ご、ご飯はどうしたんですか!?」
「水はそこらにあるし兵糧丸いっぱいあるからね〜あ、スルメもあるよ?食べる?」
「わーい!いただきます!」
「じゃ、ねえだろ」

最上さんが懐から出したスルメに私が遠慮なく手を伸ばすと、すかさず小次郎さんのツッコミが入る。
いや、それにしても兵糧丸ってあのまずいやつ…えええ…ひと月も…無理無理死んじゃう!
この人やっぱりすごい!!
もう、この人しかいない!!
私は意を決して最上さんに頭を下げる。

「最上さんさすがです!どうか弟子にして下さい!」

一人興奮し声高く弟子入りを懇願する場違いな私に、姉さまと小次郎さんの呆れた視線が降り注いだ。
はぁと小次郎さんがため息をもらす。

「お前何言って…」
「あはは、いいよー」
「やったー!ありがとうございます師匠!」
「かるっ!って、さっそく師匠かよ!」

あっさりと叶った弟子入りに、私は嬉しさのあまりぴょんぴょんと飛び跳ねた。
緊張感の欠片もない展開にもう小次郎さんのツッコミが追い付いて行かない。
そんなやり取りをしながら、入り口を目指し来た道を戻っていた私たちだったが、かなり歩いて来たはずなのに一向に入り口にたどり着かない。
なんか、同じところをぐるぐる周っているような気がする。

「おかしいな…」

小次郎さんは眉をしかめしばらく考え込んだ後、姉さまへ目で合図を送った。
姉さまもその意をくみ取りコクリと頷くと、解の印を結び呪文を唱え始めた。
朗々と発せられる呪文に呼応し、辺りの空気がぐわんと揺らぎはじめる。
短い呪文の後、姉さまが気合いとともに念を発動させると、一瞬その場の空気が痛いくらいに張り詰め耳に膜が張ったようになり、思わず両手で耳を塞いでしまう。
大きく空気が揺らいだ後、辺りは元の静けさを取り戻したが、姉さまは小さく首を横に振る。

「だめだわ…跳ね返された」

その言葉にわずかな希望の灯が消えた気がした。
姉さまですら破れない結界なんて…どうすればいいの。
もうここから出られないの?
ふいにキジトラ模様の猫が頭に浮かぶ。
テンマル、寂しくしてないかな…こんなことならもっと煮干しあげたら良かったな。
しばらくの沈黙の後、重い雰囲気を打ち消すように最上さんがパンッと両手を叩いた。
突然発せられたその大きな音に驚き、体がびくりと小さく跳ねる。

「じゃ、行ってみようか」
「え…どこに…」
「そうだな、もう方法は一つしかないらしい」
「そうみたいね」
「え?え?(・_・;」

一人会話についていけず、頭に疑問符を浮かべている私をよそに、三人は龍泉洞の奥に目を向ける。
まだ状況を理解出来ずにいる私に向かい、小次郎さんが私たちのすべき事を告げる。

「ここから出る方法は一つ、あの尼僧の言ってた怪とやらを倒すしかないって事だ」













※この旅日記はフィクションです。
実在の人物、名称、技能等とは全く関係ごz…ゴーホゴホゴホげほげほ

久しぶりに更新してみました(*'▽')
すっかり忘れてしまって、書き方も忘れてしまって、もう何が何だか分からなくなってしまって…
中途半端なところで区切ってしまっています(/ω\)ごめんなさい。
信オンぽいけど信オンじゃないっていう変な方向に向かってしまった龍泉洞編ですが、あと2話くらいで終わりにしたいです(´ω`)

そういやこの旅日記、いろんな情報を入れていこうと思い書き始めたんだったなぁ。

まー…いいか。

忍法旅日記⑭『龍泉洞編 其の参』

びゅうびゅうと唸り声をあげる風が、容赦無く全身を打ち付ける。
仙台を出発し、地図を頼りに順調に進んでいた私達だったが、龍泉洞に近づくにつれてどんどん強くなるこの風に体が押し戻され思うように足が動かない。
まるで、私たちが行くのを阻止しようとしているかのようだ。

「っどうやら…俺たちは歓迎されてないみたいだな」

先頭を走る小次郎さんが眉をしかめながらつぶやく。
その言葉に姉さまもこくりと頷いた。どうやら二人も同じことを考えていたらしい。

「ふ、吹き飛ばされそうです><;」
「龍泉洞まであとどのくらいなの?」
「もう見えてもいいはずなんだが…」

あまりの強風で視界もすこぶる悪く、数メートル先が霞んで見えない。
片腕で風を避けながら負けるものかと前方を見やると、何かがキラリと光った。

「あれ、あそこ光ってるのなんですかね?」

それは不規則にキラキラと小さく光っている。私はその場所を指さして二人に告げた。

「あれは…よし、行こう」

近くまで来ると、光の正体が見えてきた。
それは木の枝から糸のようなものでつるされた、小さな鏡の破片だった。

「やっぱりか」
「え?何がですか?」
「おそらくこれは、先に向かった仲間が仕掛けたものだろう」

そう言いながら、小次郎さんは目線をさらに前方へ向けた。
つられて私もそちらへ目をやると、またキラリと小さな光が見えた。
どうやら先へ先へと、いくつも同じような仕掛けがされているようだ。

「これを道しるべとして来いってことね」
「そうだな…つまり、龍泉洞が近いってことだ」
「な、なるほど~」
「行くぞ、二人とも気を抜くなよ」
「は、はい!」





風が、止んだ。
小さな光を頼りに進んできた私たちの前に、それはとうとう姿を現した。
ついさっきまで行く手を阻むべくあれだけ吹いていた風が、ここに着いた途端、不思議なことにピタリと止んだ。

「ここだ…」
「龍泉洞って、鍾乳洞のことだったのね」

これが…龍泉洞。
ごつごつとした岩肌の中にぽっかりと口を開けたその場所は、入り口から異様な雰囲気を放っている。
私は思わずゴクリと喉を鳴らした。

「…入ろう」

緊張感を漂わせながら先陣を切る小次郎さんに続き、私と姉さまも龍泉洞の中へと歩を進めた。
中に入ると、そこはまるで別世界に来たかのように、一面が神秘的な青に包まれていた。
ひんやりとした冷気を浴びて、背中にぞくぞくと悪寒が走る。
入り口から少し進むと、いつからそこに居たのか、仙台で会った尼僧が一人立っていた。
尼僧はこちらに気づくと、ぺこりと頭をさげた。
私たちがあれだけ苦労してここまで来たというのに、この人は一体何者なんだろう。

「残月さま、ご足労ありがとうございます」
「ずいぶんと、お待たせしてしまったようですね」

小次郎さんが探るように言うが、尼僧はおかまいなしに話を続ける。

「急かすようですみませんが、さっそくお力をお貸し下さい」
「…何をすればいいのですか?」
「この龍泉洞の、魔を祓っていただきたいのです」
「魔を祓う?」
「はい、この道を進むと、ここの魔を司る怪がいます。それを倒してほしいのです」
「怪…とは、どんなものでしょうか?」
「私は怪の存在を感じるだけで、姿は分かりません」
「姿も分からぬようなものを倒せと?」
「はい。見れば、それだと分かるはずです」

なんだかややこしい話になってきたなと思い、ちらりと横を見ると姉さまと目が合った。さすがに少し動揺しているようだ。
長から受けたのは調査依頼だったはずなのに、魔とか怪とかなんだか物騒な話になっている。
しかもそれがどんな姿をしてるかも分からないときた。
そんな滅茶苦茶な依頼など断りたいところだが、私たちには受けざるを得ない理由があった。

「分かりました…一つ、聞きたいことがあるのですが?」
「なんでしょう?」
「うちの里の者が一人来ているはずなんですが、見かけませんでしたか?」

そう、先に調査に向かった者は、確かに龍泉洞に入っているはずだ。
私たちはその者が仕掛けた鏡の破片を辿ってここまで来たのだから、間違いない。
尼僧は少しの間の後に、表情を崩すことなく「存じ上げません」とだけ言った。




ズバッ!という音とともに、小次郎さんが刀を振り下ろす。
ふよふよと浮いている、3尺程に巨大化したオタマジャクシの様な妖が、ぎえええと耳を劈くような悲鳴を上げボトリと地に落ちた。
先ほどからこの巨大オタマジャクシや、半魚人のような姿をした妖たちが次々と襲ってくる。
小次郎さんや姉さまがばっさばっさと倒してくれるので、私は手裏剣を駆使して後方支援をしていたのだが、さすがにこう連戦だと体力がもたない。
それでも何とか最後の一匹を倒した。

「はー><;やっと片付いた…もう手が痛い」
「弱音吐くんじゃないの!長に大見得きったのは誰?」
「…わたしです(、、;」
「なら、がんばんなさい」
「はぁい…(、、;;」
「この妖共は雑魚だろ…あの尼僧が言ってた怪とやらはもっと奥にいるのか」
「見れば分かるって言ってたしね」

とりあえず奥へと進もうと歩き出したその時、ズウンッ!と地面が大きく揺れた。

「うわっととと!な、なに?」

よろめきながら目を凝らすと、何やら大きな茶色い塊が姿を現した。
それはズウンッズウンッと地を揺さぶりながら、ゆっくりこちらへと近づいてくる。

「おいおい…」
「な、なんですかあれ!?」
「えーと…鬼、かな」

私たちの何倍もあろうかという巨体が、獲物を見つけて目をギラギラと血走らせながら、これまた大きな金棒を振りかざし向かってくる。

「来るぞ」

そう言って、小次郎さんが刀の鯉口に手をかけた。続いて姉さまが懐から妖術用の護符を取り出し、指を二本立てて準備する。私も愛用の小刀を抜き眼前に構えた。
臨戦態勢の私たちに気づいたのか、鬼はさらに激しく地を踏み揺らすと、雄たけびを上げながらその巨体で襲い掛かってきた。

「散れ!」

合図とともに地を蹴り、三人ともが別々の方向へと飛ぶ。
鬼が風を舞い上げながら勢いよく金棒を振り下ろすと、地面が割れるのではないかというほどの衝撃がびりびりと全身に響く。
その瞬間を狙い、小次郎さんが鬼の背後から一太刀を浴びせると、横からは姉さまが得意の妖術で風の刃を作り出し、鬼に攻撃を繰り出した。
私も小刀と手裏剣でなんとか応戦するも、鬼はさすがに硬くなかなか致命傷まで届かない。

「くっそ、かてえな」

小次郎さんがチッと舌打ちしながら大きくジャンプし、鬼の目に一閃する。
鬼はその一撃に、たまらずグォオオッと悲鳴をあげ片膝をついた。
今だ!とばかりに姉さまがとどめの一発を放つと、鬼はズズンッと大きな音を立てながらうつ伏せに倒れこんだ。

「お見事です!」
「ふうー…なんとかなったかな」
「鬼まで出てくるとはなあ、見れば分かるっつってたが、この鬼の事か?」
「きっとそうですよ!」
「それにしてはあっけない気もするわね…」
「だな。とりあえずまだ奥へ進んだ方がよさそうだ」
「え、えぇー💦」

息の上がっている私をよそに、二人はすたすたと先へと進んでいく。
こんな所で置いて行かれては堪らない。
私も倒した鬼の横をすり抜け、二人の後を追いかけた。
その時、背後で何かが動いた気がした。
何かの影に覆われて振り返ると、最後の力というやつなのか、そこには倒したはずの鬼が立っていた。
避けなければと思った時には既に遅く、その金棒は私めがけて振り下ろされていた。

「さや!!」

姉さまの私を呼ぶ声が聞こえる。
うそ…私、もしかしてここで死ぬの??
もうだめだと思ったその時、耳元でヒュッと風を切る音がして、私の横を何かが通り過ぎた。
え?と思う一瞬の間に、短い髪を金色になびかせたその人は地面を二蹴りして鬼の顔の高さまでジャンプすると、そのまま空中で鬼の顔面に右足を振りかぶった。
ドズンッと重い音がした後、鬼の巨体は背中から仰向けに倒れていき、またもや衝撃とともに地に沈んだ。
その鬼の上に軽やかに降りたのは、あの巨体を一蹴りでなぎ倒すとは思えない程華奢な、美しい女の人だった。













※この旅日記はフィクションです!ここ大事!!

龍泉洞は五人以上じゃないと入れないとか、全然クエストが違うとか、そういったのは一切受け付けておりません!
フィクションですから!(>_<)💦

もうね~戦闘シーンとか難しいよ💦
なんか日本語おかしいとか思ったらこっそり対話とかでご指摘くださいませ、こっそり直すんで(笑)
とりあえず龍泉洞の中にやっと入れてよかったわー(;一_一)
やっと合流できた知人は私の尊敬するあの人です(^○^)
今回ギャグ要素を入れれなかったことが悔やまれる…
とりあえず龍泉洞の敵とか全然覚えてないから、また近いうちに行ってみようと思います(*'▽')

忍法旅日記⑬『龍泉洞編 其の弐』

東の空がうっすらと明るみはじめて来た頃、山深いこの里には朝もやが立ち込め、夏といえど少し肌寒い。
辺りはまだ薄暗く静寂に包まれている中、私たちはいよいよ出立の刻を迎えていた。
伊賀の関所には薬売り姿をした小次郎さんと姉さま、そして鼻メガネの私。

「いや、なんでだよ」
「え?何かおかしいですか?」

小次郎さんが変装した私を見て怪訝な顔を向ける。
どこかおかしかったのだろうか…忍者だとバレない様に変装して来いと言われたから、ちゃんと姉さまから譲り受けた変装七つ道具の一つを使っているのに。
おかしくないですよね?と、姉さまに目で訴えると顔を背けられた。

「お前、初めて会った時もそれしてたけどさ、本気じゃないよな?」
「え?え?何がですか?」
「だから、その鼻メガネで本気で変装できてるとは思ってないよな?」
「えぇ?!でも私、旅してる時これで関所ぬけてましたけどΣ(゚Д゚)」
「まじか、お前ある意味すっげえな」

頭を抱える小次郎さんと、顔を背けたまま目を合わせてくれない姉さま。
おかしいな…これまでずっとこの変装で誰にもバレなかったのになぁ。
そういえばなぜか「お祭りですか?」とか「旅芸人の方ですか?」などとよく聞かれたけど…
そんな事を思いながらも、結局小次郎さんの言う通りに、私も薬売りに変装して行くことになった。
そう、こんなところで時間を使ってる暇はない。
というのも、早く依頼主の元へ急がなければいけない訳もあるが、どうやら他にも不測の事態が起こっているようだからだ。
先に調査に向かった仲間からの連絡が途絶えた。
その者は、小次郎さんのように各国を巡り依頼をこなしている手練れのうちの一人らしく、何かの事情で連絡が遅れているのか、もしくはできないのか。
どちらにせよ早々に陸奥に向かわなければならない。
しかし、そんな手練れが連絡できない状況って…もしかして龍泉洞ってヤバい場所なんじゃ…
ふいに不安に襲われ手に汗がにじむ。
すると、バンッという音とともに背中がひりひりと痛んだ。
どうやら不安が顔に出ていたらしい私に、姉さまからの気合の一撃であった。
言葉には出さなくても「しっかりしろ」と言われているのがわかり、私は姉さまの目を見て一つ深く頷いた。

「二人とも、行くぞ」
「「はい!」」

小次郎さんの合図に声を揃えて返し、私たちは伊賀を後にした。





陸奥国 ―仙台―

「はぁ~やっとついたああああ><;」

古くさい畳に荷を降ろし座り込むと、思わず盛大なため息が出た。
襖には何度も修復された跡が残り、畳も壁もボロボロで食事も出ない安宿だが、これまでの野宿に比べると天国のようだ。
道中、関所を抜けるのが厳しい場所などは抜け道や早馬を使いながら移動し、ここ仙台へと辿り着いたのは出立から十日後のこと。
体力も気力もなくへたり込む私と違い、小次郎さんも姉さまも疲れなどおくびにも出さない。
修行の差が歴然である。

「休んでる暇はないぞ。これから依頼主に会いに行く」
「依頼主との待ち合わせはどこなの?」
「それが仙台としか聞いてないんだ。尼僧だということだからまずは寺に行ってみよう」
「なんだか曖昧ね。大丈夫なの?」
「もしかしたら今回は単純な依頼じゃないかもな。長にも何か別の考えがあるのかもしれない」
「気を引き締めていったほうがよさそうね」

座り込んだまま小次郎さんと姉さまの話に耳を傾け、私もちゃんと聞いておかなければと思いながらも、体は付いていけず重い腰はなかなか上がらない。
そんな私の情けない姿に、姉は怒る気力もなく呆れている。

「ほら、さや。早く用意しな」
「ふぁい」

薬売り姿から町人姿に着替えて外に出ると、町の中は以前訪れた時と変わらず活気に溢れており、田舎者の私には目に入るもの全てが輝いて見える。
綺麗な装飾品の店や賑わう茶屋。
そういえば、前に来た時に食べたずんだ餅おいしかったなあ。
食べたいなあ。でもそんなこと言うと怒られるだろうなあ。
食べ物の事を考えていると、素直なお腹の虫たちがぐうぅと喚きだした。
数歩先を歩いていた二人にもその音ははっきりと聞こえたらしく、じっとりとした目を向けられる。

「え、えへへ…なんか聞こえました?」
「さや…」
「いや、なんか、ちょっと…お腹空いたなあって💦」
「緊張感がないからお腹が空くのよ」
「あ、ありますよ~><;」
「おい、お前らいいから行くぞ」
「もし…あなたは残月さまではございませぬか?」

ふいに背後から声をかけられ一斉に振り返ると、一人の尼僧が立っていた。

「あなたは?」
「やはりそうでしたか。ずっと探しておりました。」

残月というのは小次郎さんの名だが、肯定も否定もせずに返すと、尼僧はなぜかそうだと確信したように微笑み話を続けた。

「申し遅れました、私の名は陽炎。人は私を<陽炎の尼僧>と呼びます。ゆえあって徒歩(かち)にて諸国を行脚しております。そのことでお力をお借りしたいと、長さまに依頼させていただきました」
「あなたが依頼主というわけですね」
「はい。ご協力感謝致します」
「分かりました。では少し場所を変えましょう」

陽炎と名乗る尼僧と私たちは、人気のない町外れまで移動し今回の依頼について話を進めた。

「さっそくですが、龍泉洞へ向かいましょう。地図はお持ちですか?」
「ええ、ここに」

小次郎さんが長に託された地図を懐から取り出して見せると、尼僧はある場所を指さした。

「龍泉洞は陸奥の北東にあります。とても遠いところです。私は一足先に龍泉洞に入りますので、準備ができましたら龍泉洞へお向かい下さい」
「詳しい内容をまだ聞いていないのですが?」
「龍泉洞にてお話しいたします。中で落ち合いましょう」

その時背後でドーンと心臓に響くほどのものすごい音があがり、その音に振り向くと空に大きな光の華が咲いていた。

「花火!?」

あーびっくりした。なんでこんな昼間から花火が上がってるんだろ。

「怪しさ満載だな」
「え?」

すっかり花火に気を取られていた私は、訝し気につぶやく小次郎さんに気づき振り返ると、さっきまでそこに居たはずの尼僧が姿を消していた。

「あ、あれ??どこいっちゃったの?」
「私たちが花火に気を取られた一瞬のすきに消えたわね」
「最初から怪しいしな。あんな近くで声をかけられるまで全く気付かなかった」

この場所は水路添いの長い一本道。隠れることはできない。
ここから一瞬で消える…そんなことが普通の人間にできるだろうか。
いや、まてよ。
私はこれを知っている。

「姉さま、私はこれを知っています」
「どういうこと?」
「瞬間移動というやつですよ」
「瞬間移動?」
「そうです、巷で流行りの絵巻物に一瞬で離れた場所に移動する技が書いてありました。『龍の玉』っていう絵巻物なんですが、玉を数個集めるとなんと龍が願いを…ふが><;」

言い終わる前に、姉さまの両手で息苦しいほど口を塞がれた。

「それ以上いってはだめ!いろいろあるから!権利とか!」
「ふがふがふが(権利ってなんですか)><;」
「これ以上絵巻物の話をしてはだめよ!」

鬼の形相で力いっぱいに口を塞がれたものだから、あまりの苦しさから早く解放されたくてぶんぶんと首を縦に振った。
そして姉さまの手が外されると、私は大きく息を吸い込んだ。

「ぷはー死ぬかと思った(;O;)」
「とりあえず、準備をして龍泉洞へと向かおう。こうなると先に行った仲間のことも心配だ」
「そうだね。早く帰って支度しましょう」
「は、はい」

私たちはすぐさま宿へ戻り龍泉洞へと向かう準備をはじめた。
連絡が途絶えた仲間。謎の尼僧。
龍泉洞とはいったいどんなところなんだろう。
言い知れぬ不安と緊張の中で、私は微かに震える自分に気付かぬふりをし力強く拳を握りしめた。
















※この旅日記はフィクションです。
登場する人物、団体、名称などはちょっとしか関係ございません。
絵巻物については全くもって無関係でございます!

こんにちは(*'▽')
ややこしくなってきてしまいました!ほんともうどうしよう!?
龍泉洞編といいつつ、まだ龍泉洞着いてないのかよ!って思ってる皆さまへ
だよね〜(笑)私もそう思ってる(爆笑)
とりあえずまぁ、みんなの暇つぶしになればいいかなって(遠い目)
ちなみに尼僧のセリフは少し変えていますが、ほぼ信オン通りに抜粋しております(^O^)
鼻メガネにつきましては、旅日記ちょこっとおまけの鼻メガネ編をご覧ください(笑)

この旅日記は一週間後くらいにもう一度読むと一部変わってたりする事があるので悪しからずm(__)m

忍法旅日記⑫『龍泉洞編 其の壱』

じめじめとした梅雨も明け、日も長くなって来たこの頃。
姉妹の暮らす小さな藁ぶき家からは、まだ朝も早いと言うのに、けたたましい叫び声がきこえてくる。

「ぎゃあああ!テンが私のイワシとったああああ><;」

朝餉に姉が焼いてくれたイワシを、キジトラ模様の猫は悪びれもせずくわえて逃げていく。
村長の依頼で保護したその猫は、結局新しい家族の一員となり「テンマル」と名付けた。
しかし、かわいい顔をしてとんだイタズラ猫で、ちゃんと煮干しを与えているにも関わらず私のイワシまで横取りする。

「あねさまあ~テンがぁ~」
「諦めなさい」

姉はさっさと自分の朝餉を平らげ、食後の茶をすすった。
テンはなぜか毎朝、姉の分には手を出さず私のイワシばかりを狙ってくる。
猫ながらにすでに格差を悟っているようで、それがさらに悔しさを増す。
ごちそうさまと言わんばかりにこちらをチラッと見てから、テンは食後の毛づくろいを始めた。
その生意気な様子に、拳を握りしめて宣言する。

「くっそぅー…テンマルめぇ。次に私のイワシを狙ったらお前の煮干しも取ってやるから!忍者なめんなぁ!」
「猫と小魚とりあう忍者なんていないわよ」

姉はそんな私の姿にため息を漏らしながらつぶやくと、ふいに何かを感じたのか急ぎ外に出て空を見上げた。
何かあるのかな?と私もついて出て空を見上げてみると、雲一つない晴天の中を、伊賀の見張り役である犬鷲が大きな翼をひろげピイーピイーと鳴きながら旋回していた。
おそらく何者かの帰還か侵入を告げているのだろう。
情けないことに、半人前にも満たない私にはそれすらも分からない。
姉はしばらくその犬鷲の様子をじっと見つめ、一人「へぇ」とつぶやくと、頭に「?」を浮かべている私に向き直った。

「長のところに行くから、さやも支度して」
「え?長のとこですか?誰か帰って来たんですか?」
「まぁね」

そう言った姉の表情は少し嬉しそうに見えて、私はさらに「?」を浮かべた。




長の屋敷に着き、いつものように門の外から名乗ると、中から「おー、入れ」と声が聞こえてきた。
あれ?いつもは外に出てきてくれるのになぁと思いつつ、姉の後ろに続き屋敷の中へと足を進める。
長の屋敷は門構えこそ立派だが、中はそれほど広くはなく、土間の他には寝室と客間の二部屋しかない。
外観と比べて部屋が少なすぎるので、きっと本人しか知らない隠し部屋が存在するのだろう。
私たちはいつも通される客間の前で立ち止まり、部屋の中へ向かいもう一度声をかける。

「長、るーあんです」
「さ、さやです!」
「2人とも入っていいぞ」
「失礼します」

長のお許しをもらい、姉が部屋の襖に手をかけた。
それにしても、いつまでたっても長に会う緊張感にはなかなか慣れないもので…
姉の後ろに隠れたまま、襖が開くにつれてついつい下を向いてしまう。

「るーあんいいところに来た、ちょうど呼びに行こうと思ってたところだ」
「やっぱり、帰って来たんだね。放浪男が」
「よお、久しぶりだな」

ん?
この声…
姉と笑いあう放浪男と呼ばれたその男の声には聞き覚えがあった。
おそるおそる姉の後ろから顔をのぞかせる。

「あ、ああああああああ!!」

上座に胡坐をかいて座っている長に対し、向かい合うように座っているその男は、半身をこちらの方に向け姉と話している。その見知った顔に驚き失礼にも男を指さし、長の前だというのに大声をあげた。

「あれ、お前あの時の」
「なんで小次郎さんがここに!?」

そこにいたのは佐渡で出会った小次郎さんだった。
えええ?なんでここに?あれ?姉さまと知り合いなの??Σ(゚Д゚)
思いがけない再会に脳がついていけずにいると、その様子を見ていた姉が口を開く。

「二人とも知り合いなの?」
「はい!修行の旅でお会いしたんです。まぁ途中で置いて行かれたんですが!」
「いや、仕事があったから…」
「姉さまも知り合いなんですか?」
「こじさんは私の同期なの、まぁほとんど伊賀に戻らずに放浪ばっかしてるけどね」
「いや、仕事だから…」

姉妹の間で所在なさげにしている小次郎さんを見て、長が珍しく大きな声で笑う。

「ははは、もてる男はつらいの」
「全然違うでしょ、長までやめてくださいよ」

顔の前でイヤイヤと手を振り気まずそうに言う小次郎さんに、長はまた一つ笑いをこぼすと姉妹をなだめた。

「まぁ、二人ともそのくらいにしてやれ。実は仕事の話があるんだ」
「「仕事?」」

ふいに出た仕事という言葉に、姉妹仲良く声がかぶる。
長は一つゴホンと咳払いをすると、懐から地図を取り出し広げて見せた。
姉と私は小次郎さんの両脇に座り、地図を見ようと身を乗り出した。

「陸奥ですね」

地図を見てすぐに、小次郎さんがその場所に気づいた。
陸奥は私も一度行った場所だ。
だが…なぜか…
地図を見てもまったくピンと来なかった(;一_一)
そんなことを一人心の中で考えている私をよそに、話はどんどん進んでいく。

「そうだ。今回の仕事は陸奥での調査依頼だ。ある尼僧からの依頼なんだが、陸奥に龍泉洞と呼ばれる洞窟があるようで、その内部を調査してほしいとのことだ」
「龍泉洞…ですか」
「実は一人先に調査に向かった者がいるんだが、まだ情報不足だ。あちらで落ち合えるとは思うが、小次郎だけでは難しいかもしれんのでな、るーあんとさやを連れて行ってほしい」
「「ええ!?」」

その長の言葉に、再び姉妹仲良く声がかぶるが、その声色は全く違うものだった。

「やったーやったー!任せてください!ばっちり任務遂行いたしますう!」
「ま、待ってください、さやは半人前ですよ?いや、五分の一人前ですよ!?」

浮かれる私に焦る姉、その二人を交互に見やり、ツルツル頭をぽりぽりとかくと、長はため息まじりに口を開く。

「野良仕事ばっかりしてても上達せんだろ、小次郎とるーあんがいるならさやにとってもいい経験になろう」
「で、でもさやがいないとうちには猫が…」
「留守の間はわしが面倒を見よう。それでよいな?」
「はい!!がんばりまっす!!」

久しぶりに忍者らしい仕事をもらえ、やる気に溢れ元気よく返事をする私とは裏腹に、手練れ二人は思わぬ足枷をつけられ項垂れた。

「出立は五日後の寅一刻、各々万事抜かりなく備えよ」
「御意」

長からの命を三人揃って畏まり受ける。
こうして私たちは未開の地、陸奥へと旅立つこととなった。
そしてただの調査のはずのこの依頼が、思わぬ程長く険しいものになろうとは、この時はまだ知る由もなかった。












※この旅日記はほぼフィクションです。実在の人物、団体、名称、猫とはちょっとしか関係ございません。

こんにちは!(*'▽')ノ
信オンも勇士の章になり、真田までできているというのにこっちは全然進んでおりません(笑)
まぁ仕方ない、別枠ってことで(>_<)💦
龍泉洞とか書いちゃったけど、うちの法まだ龍泉洞1しかクリアしてないんだけどね(/ω\)
なので、続きはまた3か月くらい先だったりして(笑)
もう龍泉洞1とか忘れちゃったので、近いうちにもっかい行かなきゃ!
誰か!一緒にいきませんか?w

挿絵つけてくれる強者いないかなぁ〜そしたらちょっとはマシな旅日記になるのに(笑)
ちなみに短時間で書いてしまったので、ちょこちょこ手直ししていくかもしれません💦

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